2007年07月08日

マショーのバラード vs バッハ vs ソナタ形式

先週MIDI 環境の整備が完了したことを書きましたが、せっかくなので何か一曲作りましょうということで、バッハのプレリュードのちょっとした MIDI を「中世以外の音楽のまうかめ堂」の方に up しました。

この曲は私の好きな曲で、難易度も手頃なため、バードの Nevells booke と出会う前はピアノに向かうと必ずこの曲を弾き始めるような曲でした。

MIDI 自体はほんとにたいしたものではありませんが、そういえば去年マショーのバラードを作っていたときに、マショーのバラード&バッハの舞曲形式の鍵盤曲&ソナタ形式について書きそびれていたなぁ、ということを思いだし、この MIDI を up しました。

「マショーのバラード&バッハの舞曲形式の鍵盤曲&ソナタ形式」について一体何を言いたいのかというと、以下のようなことです。

・これらは構造的に同型である。それは形式的なものだけでなくて、音楽の力動的構造の点で同型である。

・すなわち、18、19世紀に隆盛を究めた表現形式であるソナタ形式は、少なくとも14世紀マショーのバラードまで遡れる。

「また、まうかめ堂はとち狂ったか」と思われるかもしれませんが説明します。

まず、上でバッハの舞曲形式の鍵盤曲と言ったものは、フランス組曲やイギリス組曲、あるいは無伴奏チェロ組曲なんかの、アルマンドとかクーラントとかジーグとか舞曲起源の形式の曲を指しています。

それらはそれぞれ性格的に異なるフレイバーを持つ形式ですが、繰り返しのパターンは一様に AABB の形をしています。

一方、中世フランスの定型歌曲の一様式であるバラードは、これも舞曲が起源だとされていますが、その繰り返しのパターンは AAB です。ときどき AABB のように B パートを繰り返すことがあります。

というわけで同じ形をしてますね……ということが言いたいのではなくて、上でもわかりにくく言ったように内容の同型性が見られるということを言いたいです。

さて、野暮ったいことを言うならば、大抵の音楽作品は起承転結というストーリー展開の図式で理解することができます。

バッハの舞曲の場合、(何が「起」で何が「承」かは言う気はありませんが、)B パートのはじめに明確に「転」が来ます。

すなわち、A パートの終わりでフレーズが一旦締めくくられた後、B パートの開始部では和声や調が動いたり、音楽がドラマティックに展開したり、それまでと性格的に逸脱しているようなことがいろいろ起こります。

そして、B パートの後半で元の鞘にまとめてみせると、たとえ一分二分の短い曲であってもひとつのドラマが過不足なくそこに完結することになります。

こういう構造的な図式はバッハに限ったことではないかもしれませんが、バッハにおいてはとりわけ顕著であるように思います。

一方、マショーのバラードにおいてもB パートのはじめに明確に「転」が来て、バッハの舞曲のとき同様なことが起こります。すなわち和声や調が動いたり、音楽がドラマティックに展開したりします。

マショーのバラードの場合、特に注目したいのは、主旋律を担う上声部が、B パートのはじめで高い音域から入ることが多いことです。A パートの終わりの音から比べ、その五度、六度上は当り前、七度八度の跳躍もあります。

さらに、B パートの終わりの部分は、A パートの終わりと全く同一であることも多いことも強調しなくてはなりません。

やはりこういう構造的な図式はマショーに限ったことではなくて、同時代あるいはその後の時代のバラードにも見られるものですが、マショーにおいては性格的にとりわけ顕著です。

で、ソナタ形式ですが、これは上記のバッハの舞曲の力動的な構成を、主題とその展開という構成に敷衍したものに他なりません。
(あ、これは私が勝手にそう思っているわけでは必ずしもないです。たとえば、今、私の手元にある音友の新音楽辞典にもそれを示唆する記述がちゃんとあります。)
実際、モーツァルト以前の初期のソナタ形式の楽章では、本当に AABB の形式をしていることが多いようです。B パートに展開部と再現部が入っていて、展開部が「転」です。

というわけで、マショーのバラード&バッハの舞曲&ソナタ形式は全て構造的に同型である、という認識に至ります。

さて、上の議論で、バロックの舞曲がソナタ形式にすんなりつながっていることには一定の理解が得られるかもしれませんが、バッハの舞曲とマショーのバラードの間に直接的あるいは間接的つながりはあるでしょうか?

すなわちマショーのバラードに見られる構造的な形式が時代から時代へと連綿と受け継がれて、バッハの時代にまでつながっているのか?……

おそらく答えは No だろうと私は思います。

これにはバロックの舞曲形式も、中世のバラードという形式も、もともと民間の舞曲がその起源だったことに注目する必要があると思います。
すなわち、普遍的、あるいは不変なのは AABB という繰り返しのパターンそのものでしょう。(踊りの音楽における一パターンとしてのこの繰り返しの形式は、西洋世界だけのものですらないでしょう。)

その、ある種典型的で単純なパターンを、自身の芸術的な音楽に昇華させていくその発現のさせかたがバッハとマショーで共通していたと考えるのが自然だろうと思います。

別のいい方をするなら、西洋音楽において、17世紀以降の構成についての考え方、発想法、精神性が既に14世紀にもあったということです。

西洋音楽の歴史において、その構築的な側面について、「ギョーム・ド・マショー以来ブーレーズにいたるまで、西洋音楽は構築的であった。」というような記述を見たことがありますが、それはあながち間違いではないかもしれません。

…………

と、なにやら書いてきましたが、(ひさしぶりにまじめな顔でこういうことを書くと照れますが、)比較のため MIDI でも並べておきましょう。

バッハ:プレリュードハ長調: [MIDI]

クレメンティ:ソナチネ第一楽章: [MIDI] (AABBの形のソナタ形式の楽章)

マショー:Biaute qui toutes autres pere(ballade): [MIDI], [mp3].

こうやって並べるとマショーはだいぶ地味に見えてしまいますね。
それにマショーだけ明らかに異質ですし…。
posted by まうかめ堂 at 23:44| Comment(0) | TrackBack(1) | 中世以外の音楽

2007年07月01日

MIDI 環境の整備

調整を進めている新マシン ciconia ですが、MIDI 関係のソフトのインストールがひとまず終わったので、全体の98%ぐらいの調整が完了したことになります。

以下そのお話です。

まず TiMidity++ は aptitude でパッケージを取ってきたら自動的に終了。

timidity は単体では音は鳴らないので、音源の GUS patch を入れる必要があります。これについては、以前から使っていた大量のストックがあるのでそれをそのまま使えば良いのですが、Debian ではその辺どうなってるのかと見てみると、あるじゃないですか、公式配布のフリーなパッチが…。

どうもこれのもともとの配布元はfreepats.opensrc.orgというところらしいです。

で、中身を見てみると、ところどころに抜けてる音色があって、GMの128音色全部が揃ってるわけではない…。

なるほど、過去にネット上に出回っていたパッチも、徹底的にライセンスを洗い出すと本当にフリーなものはこれしか残らなかったのかもしれませんね。

で、パッチもひとしきり試したりしつつ前から使ってたのをベースに一揃組みました。

というわけで、timidity はすぐにインストール完了。

さて、問題はいつもほんとに御世話になってるシーケンサ、STed2 が動いてくれるかです。

たしか woody のころまでは、これも Debian パッケージに入っていたのですが、STed2 自体は5年ぐらい前から新しいヴァージョンが出ていません。

果して Debian etch で動いてくれるでしょうか。

………

コンパイル自体はあっさりできました。

でも起動しようとすると Window が開けないみたいなエラーが出て止まります。

で、X 関係の部分のソースで当たりを付け、原因を探ってみたら、フォントの設定に失敗してるらしいことがわかりました。

Debian etch では、X が、XFree86 から X.Org に移行したので、その辺の関係かもしれません。面倒なのでかなり ad hoc な対応として、エラーを無視し、システムに存在することがあらかじめわかってるフォントを明示的に指定してやるようにソースを修正したらきちんと起動できました。

(何をどうしたかを書いてもいいのですが、たいしたことをやっておらず、有益な情報では無いのでやめときます。)

で、timidityを STed 経由で鳴らすこともあっさり成功、懸案のSTed2 は難なく使えるようになりました。

さて、これで後は Roland SC-88 をとりあえずシリアル経由でつなげて MIDI 環境の構築が完成です。

と、思って、PC の背面を覗いたら衝撃の事実が…。

シリアルポートが無い!!!

IDE だとか AGP だとかに気を取られていてシリアルポートが無かったことに今の今まで気づきませんでした(--;)。

これには笑うしかないです。
「そうかぁ、シリアルポートも無くなったんだぁ」とひとしきり遠い目をしてみた後、気を取り直して SoundBlaster から MIDI ケーブルをつなげました。

これで MIDI 関係は完成です。

(正確には STed2 が勝手に /dev/midi を初期化してしまうため、SC88につながってる MIDI A ポートがブロックされてしまう現象がありましたが、そこはやはりソースを適当に修正して望みどおりに動くようにしました。)

さて、これで「まうかめ堂」のコンテンツを製作する体制は完全に整いました。

手始めに何かちょっとした MIDI を作りましょうかね。
posted by まうかめ堂 at 18:55| Comment(0) | TrackBack(0) | Debian