2008年02月02日

「夜のガスパール」

わけあってこのところラヴェルのピアノ曲をよく聴いています。
(ラヴェルのピアノ曲はスタンコお嬢さんがCDを沢山もっているのでごっそりと借りてきて聴いています。)

なんで突然ラヴェルのピアノ曲というと、メシアンの本を読むためで、もともとラヴェルにすごく興味があるというわけではなくて、むしろメシアンがラヴェルをどう読んでいたのかの方に興味があります。

とはいうものの、ラヴェル自体に関心がないわけではないです。ラヴェルのピアノ曲に関してはパッと見の甘さや官能性に目を奪われていると間違いで、また、ラヴェルはオーケストレイションの達人でもありオケ曲も傑作ぞろいですが、より自由に冒険できたのはむしろピアノ曲の方であっただろうという感じがしているので、その辺り一度きちんと見ておきたいというのがあって聴いています。

で、いきなりですが「夜のガスパール」です。(私の場合、最も singular なものから始める傾向が強いですね。)

スタンコお嬢さんから借りてきたCDを聴き、さらに楽譜を仕入れてきて見て一言「えらいことになってる…。」

技術的な難しさもさることながら(この曲の演奏を聴くというのは、オリンピックを見るようなものですね)、問題は内容的な難しさの方でしょう。

微妙なバランスで宙に浮かせながら物を運ぶようなというか、不安定な停留点に沿って進み続けなければならないというか、どの方向にもちょっとでも転ぶと壊れてしまうようなデリケートさがありますね。

しかもなかなか正体を見せてくれないというか、きらびやかなヴェールの中に本体がいるみたいに思ってヴェールをはがしてみるとそこには何もなくて、ではヴェールの方が本体だったのかと思うとやっぱり中に何かいるみたいに見える、不思議な曲です。

しかし、こんな難曲でもすごい演奏を聴かせてくれるピアニストの方々がいるもので、それらについて勝手ながらランキング形式で感想を述べたいと思います。

1.アルゲリッチ(’75)
これ以上の演奏はなかなか存在しにくいのではないかという演奏ですね。ものすごく精密で繊細なことを、驚くべき精度でやりきっている感じがします。つまり、本当に美しく繊細でありながら、その核においてはきっちり分析的に音楽をとらえていて、その仮想的音像を寸分違わず現実の音として実現してみせている感じがするのです。

特に始めの二曲「オンディーヌ」と「絞首台」は、1000分の1ミリの精度でものを作っているような緊張感があり、「スカルボ」では幾分解放に向かうのだけど、その瞬間にフッと女性的なところが見えてきて、それがまた魅力的に感じます。

2.マガロフ(’69)
きっとほとんど知られていない演奏ですね。ライブ録音です。
アルゲリッチとは対照的に、作りこんで作りこんでという風でなく、手持ちのレパートリーをその日その場の空気に乗ってなかば即興的にという感じなのですが、この迫力、圧巻です。まさに貫禄ですね。

3.ポゴレリチ(’83)
ものすごい enfant terrible、モーツァルトと同じで天使か悪魔かわからない(でも悪魔のほうがちょっと多めの)ような演奏です。すさまじいですね。別の宇宙の音楽を聴いているみたいです。この底知れなさはなんとも形容しがたいですね。

4.ギーゼキング(’37-'38)
録音の古さもあって、深い霧の中から聞こえてくるような「オンディーヌ」が幻想的です。また、このスピードとキレのよさは、生で聴けたらどんなにいいだろうなと思うような演奏です。

5.フランソワ(’67)
某レコ芸関係の本のランキングではアルゲリッチに次いで二位にランキングされてたりする演奏ですが、こんなに下になってしまいました。なんというか力でねじ伏せてる感があるんですね。「クープランの墓」はすごくいいんだけど、「夜のガスパール」は好みでないということになっています。

posted by まうかめ堂 at 23:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 中世以外の音楽
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