ヴォーカル・アンサンブル・カペラのノートル・ダム・ミサのディスクを聴いたのでその感想を少し書きたいと思います。
カペラのノートル・ダム・ミサは以前2005年1月の演奏会で聴いて、その感想をlivedoor blog 時代の「まうかめ堂日記」に書いていました。なかなか今読み返すと、仮にカペラの人が読むことがあったとしたら失笑ものだろうというようなことも書いていますが、実際、どうしてもはっきりとは書けなかったのだけど「カペラにしてこの完成度?」というのが偽らざる感想で、それにいろいろ理屈を付けようとしたのでああなったというのが本当のところです。
それで今年一月の同曲の演奏会には本当に行きたかったのだけれど、今年は年始からバタバタと忙しく断念。「ダヴィデのホケトゥスと Felix virgo のモテトどうだったのかなあ、来年もやってくれないかなあ」と思っていたところにCDが出たので即、買いでした。
で感想です。
・やっぱりカペラは上手いです。CDだと他と比較しやすいですね。間違いなく世界のトップレベルの団体ですね。さすがに演奏の水準は格段に上がっていましたね。
・CDでようやくカペラのやりたかったことがわかったような気がしました。
なんというかフランドル楽派の視点からその源流のミサ曲を見るとこうなると言っても良いかもしれません???。
最も顕著にそう思うのはムジカ・フィクタのある種の徹底ぶりです。
Kyrie の冒頭部分から他の演奏では聞かれないSol#のムジカ・フィクタが Triplum に出現したりするのですが、これほど全曲にわたって consistent にというか、調的な homogeneity を得ようとしたものは無かったのではないかと思います。
特に頻出する Fa supra La のムジカ・フィクタは楽譜を見ながら「なるほどなぁ」と思う反面「そこまでやらなくても」という気も多少しました。
好みの問題なのかもしれませんが、マショーのこの曲に関しては ambiguity を残して、heterogeneous なままな方が私としては良いです。特に終止的な部分については、全てをクロマティックにしてしまわないで、ダイアトニックなところが残っていた方が良いです。
・教会で聴いているとそれほど感じないのですが、CDで聴くとテンポがだいぶ遅めに感じ、ノートル・ダム・ミサに関しては全体に重たく感じますね。そのためか、折角美しいパースペクティブの変化が見事に歌われているのにもかかわらず単調な印象が残ってしまうのが少し残念でした。
・アレルヤ唱の後にダビデのホケトゥスを置くというのはどうしていままでだれもやらなかったのだろうという感じで良いです。演奏も、私の知っているこの曲の演奏の中で間違いなく最高のものでした。
・モテト Felix Virgo / Inviolata Genitrix / Ad Te Suspiramus もカペラならではの美しさに満ちていますね。こちらは本当にいままで無かったタイプの演奏かもしれませんね。
(う〜む、ノートル・ダム・ミサ以外の曲の方がやっぱり良いですね。)
・結論として、カペラファンなら間違いなく「買い」です。
既存のノートル・ダム・ミサの演奏に飽きていてもっと別の演奏が聴きたいという人も「買い」…でも初めての人にはあまり勧めない、という感じです。
2006年06月10日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/826508
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
この記事へのトラックバック
http://blog.sakura.ne.jp/tb/826508
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
この記事へのトラックバック